09-20 作者吉田 恒
日本の通貨当局は、2022年9月、約10年ぶりに為替市場へ介入した。そして最近円安が再燃したことで、2年連続での為替介入の可能性に注目が集まっている。
欧米の通貨当局による為替介入は、2001年9月を最後に、すでに20年以上も行われていない。2001年9月のケースは、いわゆる「9・11」、米同時多発テロ事件を受けた米ドル急落に対して、G7(先進7ヶ国財務相・中央銀行総裁会議)が米ドル防衛で協調介入に出動したもの。
その前年、2000年9月には、ユーロ買いの協調介入が行われた。この2000年、2001年のG7協調介入を最後に、日本以外の先進国、特にFRB(米連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)では単独の為替市場介入も20年以上行っていない。そうした中で、先進国の中で日本だけが為替介入を行っているのはなぜか。
1つには、米ドル/円がユーロ/米ドルと比べた場合一方向へ大きく動き、「行き過ぎた動き」になることが多かったからではないか。仮に過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)からかい離率が±2割以上となったケースを「行き過ぎた動き」とするなら、米ドル/円の場合は1990年以降の30年余りの間に6回あった(図表1参照)。2000年以降で見ても4回と、おおむね5年に一度のペースで「行き過ぎた動き」が発生してきた計算になる。
これに対して、1999年に誕生した欧州統一通貨のユーロの場合、ユーロ/米ドルの5年MAかい離率が±2割以上に拡大したのは3回で、2010年以降は一度もなかった(図表2参照)。このうちの1つ、2000年のケースで、上述のG7協調ユーロ買い介入が行われた。
為替介入の目的は、ファンダメンタルズから大きくかい離した「行き過ぎた動き」をけん制、ないし是正すること。その目安を、5年MAかい離率が±2割以上に拡大したケースとすると、そもそも2010年以降は米ドル/円では「行き過ぎた動き」が度々起こったのに対し、ユーロ/米ドルではそれがほとんど起こらなかったことから為替介入の必要性が生じなかったということはありそうだ。
米国の場合は、米ドルが基軸通貨ということから、本来的に為替相場の変動に鈍感とされる。これまで見てきたように、対円での米ドル相場は「行き過ぎた動き」も見られたものの、対ユーロではそれほどでなかった中で、為替介入の必要性を感じることはなかったということではないか。
ただ、日本の通貨当局は、1999年や2000年代前半など、米ドル/円の5年MAかい離率が±2割以上に拡大しない、特に「行き過ぎた動き」でもない局面でも為替介入に出動していた。これを見ると、日本は欧米より為替相場に過敏な国という印象がある。
その日本でも、2010年以降の為替介入は、米ドル/円の5年MAかい離率が±2割以上に拡大したケース以外では行われなくなった。欧米の通貨当局が為替介入をやらなくなったことが、日本の通貨当局にもよほどのケース以外は為替介入を行わないということに影響した可能性はあるのではないか。